2008年12月21日

【貞子祭り短編その1】川д川ファンタジー貞子 呪術師編のようです

じゅじゅつし.jpg

絵師:nagioさん

start!



 基本的に、魔物絡みの仕事は危険を伴う。
 故に報酬は大きく、相場じゃ最低でも3000ゴールドからだ。

 で。
 森のゴブリン退治で300ゴールドだと?
 ふざけんな。

(;゚∀゚)「割り合わねぇっての!」

川д川「木に八つ当たり。小物」

(;゚∀゚)「うるせーぞ呪術師。えっと、名前なんだっけか……?」

川д川「貞子」

( ゚∀゚)「ああ、そうそう。貞子だったな。
     とにかくよ、この仕事は割りに合わない。分かる?」

川д川「ええ」

( ゚∀゚)「で、二人でやると更に報酬は半分。150ゴールド。
     150っつったら、飯食ってハイ終わり」

川д川「そう」

( ゚∀゚)「だからよ」

川д川「なんでしょう?」

( ゚∀゚)「お前さんは家帰って寝てろ。この仕事は俺が一人でやっとくから」

川д川「だが断る」

(;゚∀゚)「あーっもう! 何でだよ!」

 俺はガシガシと頭を掻いた。
 あー、現在の状況。仕事内容は前述したとおり。

 薄暗い森の中、隣を歩く相方は一名。よりにもよって女だ。
 話を聞くと、どうやら腕利きの呪術師らしい。
 知るか。

川д川「一度受けた仕事は遂行するのがプロ。
    で、質問。ジョルジュはどうして頑なに一人でやりたがる?」

(;゚∀゚)「仕事は一人でやるって決めてんだよ。
     誰かと組むのは好きじゃねえんだ」

川д川「我が侭」

(;゚∀゚)「足手纏いはいらねえって意味だっての!」

 こいつが、どんだけ腕が立つかは知らん。
 が、どう見ても貧弱な体、ボロボロのローブ、うさんくさいドクロの杖。
 装備を見た限り、明日の飯代にも困ってそうな風貌である。

 断言。こいつ、絶対弱い。
 見た目もまだ若いし、ギルダー成り立ての新参って所だろう。

( ゚∀゚)「なあ」

川д川「何?」

( ゚∀゚)「悪い事は言わん。村に帰って大人しく待ってろ」

川д川「お断り」

( ゚∀゚)「……あのさ、一応聞いとくけど、お前魔物と戦った事ある?」

川д川「いや。ほとんどの場合、人間が相手だった」

( ゚∀゚)「……は?」

川д川「盗賊や山賊相手がほとんど。
    魔物退治は今回が初めて」

 貞子は、ふん、と鼻を鳴らす。
 ……無表情で自慢する奴、生まれて初めて見た。

( ゚∀゚)「じゃあ、なおさらやめとけ」

川д川「何故」

( ゚∀゚)「あのなー、魔物の凶暴性は人間の比じゃねえんだぞ?
     本能のみで動いてっから、手加減も躊躇もねえ。
     油断したら後ろからガブリで人生終了だ」

川д川「言われなくても知っていますが、何か?」

( ゚∀゚)「……ハァ。もう好きにしろ。
     ただし、ピンチになっても助けてやんねーからな。
     自分の身は自分で守れ。以上」

川д川「御衣」

 俺は大股でずんずんと先へ進む。
 あー、畜生。結局お守り付かよ。面倒くせえなぁもー。

川д川「ジョルジュ、あんまり不用意に進むと危ない」

( ゚∀゚)「うるせーなっ。ゴブリンの住処まではまだ遠」

 不意に足元に穴があいた。
 悲鳴をあげる間もなく落下。尻をしたたかに打ちつつ、泥にまみれた。

川д川「落とし穴。ゴブリンの十八番」

(#゚∀゚)「……」

川д川「ちゃんと地面の色を見ないと駄目」

(#゚∀゚)「あーあー、はいはい!ワカッテマスよそれくらい!」

 俺はヤケクソ気味に叫びながら、穴から這い上がった。
 出だしから最悪だ。いつもなら、こんな初歩的な罠に引っかかるはずないのに。

 相手がゴブリンだったからよかったものの、
 もしこれが、針付落とし穴とかだったら……うえ、串刺し想像しちまた。

川д川「手、貸す?」

 貞子がそっと細い手を差し伸べてきた。
 こんな小娘に同情されるなんて、屈辱だ。
 俺はギルダー暦10年だぞこんちくしょう。

(;゚∀゚)「いらん! いいから、さっさと先進んでちゃっちゃと仕事終わらせるぞ。くっそ、何でたかが150ゴールドの仕事でこんな……」

川д川「値段は関係ない。ギルダーにとって大切なのは、困っている人を助ける救いの精神」

( ゚∀゚)「おおう。ギルダーのテンプレだね。
     そんなもんを口に出すとは、流石新参。若いねー」

川д川「……何かおかしいか?」

( ゚∀゚)「別に。まあ、そのうち嫌でも分かるさ」

 言って、おれは泥を払い歩みを進めた。
 ギルダー。ギルドに依頼された仕事を請け負い、生計を立てる職業だ。
 その内容は、何でもござれだが、当然汚い仕事も中には存在する。

 裏のいざこざ。金の横流し。妬み悪意策略……。
 俺は身をもって、人間の欲の醜さというものを見て、感じてきた。

 そう。あの時、俺が気付いていれば。
 あいつも死ななかったのかもしれない。

川д川「どうしたー?」

( ゚∀゚)「あ? 何が」

 貞子は俺の顔を指差す。

川д川「何だか今にも腰にさした剣で自らの喉を切り裂きそうな顔」

(#゚∀゚)「ぶっ殺すぞコラ。年上には敬意を払え、敬意を」

川д川「わかりました。おっさん」

( ゚∀゚)「よし、次言ったら殺す。俺はまだ二十代だこの呪術師野郎。覚えとけ」

川д川「例えこの命尽きようとも、私の怨みは憑依し敵の身を滅ぼすだろう」

(;゚∀゚)「……何それ」

川д川「呪術師のテンプレ」

( ゚∀゚)「さっさと行くぞ」

川д川「あ、無視。呪ってやる」

 勝手に呪えバカ。
 変な奴だ。
 呪術師は変人の集まりだというのは、どうやら本当のようだな。

 ま、こんなんでも一応女だしなー、あー面倒くせえ。
 さっさと仕事を片付けて、おさらばしよう。
 
 もう二度と、あんな思いはしたくないし、な。





 ゴブリンと聞くと、弱いとか、雑魚みたいなイメージがあるかもしれない。
 が、そんな事をのたまう奴は、モノホンの魔物ってもんを見た事の無い素人か、いきがったガキだ。

 ゴブリンは、見た目はチビでブサイクな小人だが、
 その実、怪力は岩をも持ち上げ、動きは俊敏でコンビネーションも上手い。

 ま、俺くらいの剣士になれば他愛もない相手だが
 素人は無闇に手を出さず、食い物を置いて逃げるが吉という事だ。

川д川「足跡」

( ゚∀゚)「ああ。だいぶ近いみてーだな」

 地面にある痕跡から、奴らの住処を捜し当てる。
 魔物狩りの基本である。
 大概は洞窟や、空き家を根城にしている場合が多い。

( ゚∀゚)「気をつけろよ。そろそろ出くわしてもおかしくねーからよ」

川д川「ジョルジュも」

 気をつけろってか?
 忠告されるまでもない。俺は気を周囲にめぐらせ、気配を探る。
 何かが近づいてくれば、すぐに分かるスキルだ。
 基本中の基本だが、これが出来なきゃギルダーは勤まらない。

( ゚∀゚)「……む。いるな。二体ってとこか」

川д川「丁度いい」

 貞子は杖を構えた。
 ……が、その腕はやっぱり細く、頼りない。
 戦う気満々みたいだが、ここは任せてもらおう。

( ゚∀゚)「俺がやる。お前は離れてろ」

川д川「大丈夫?」

( ゚∀゚)「はっ。ゴブリン二体にやられるようじゃ、とっくにお陀仏してるよ」

 俺は長剣を取り出し、だらりと構えた。
 ゴブリンの動きが止まる。どうやら木々に紛れて、奇襲をかける作戦のようだ。

( ゚∀゚)「……」

 精神を集中する。
 右と左、挟み撃ち。どちらから先に来るか。

「キィ――ッ!」

( ゚∀゚)「右ッ!」

 すかさず剣を振り上げる。
 ゴブリンの右腕が飛んだ。甲高い悲鳴が森に轟く。

「キィ!」

( ゚∀゚)「ライトニングッ!」

 棍棒を振り下ろしてくる右のゴブリン。
 俺はそいつの胸に雷撃の呪文をぶちかましてやる。
 詠唱無しだから威力はほぼゼロだが、目くらましにはなる。
 案の定、視界を潰されたゴブリンは目を押さえて転倒した。

( ゚∀゚)「雑魚がいきがってんじゃねえよ!」

 回転し、剣を振り下ろす。
 ゴブリンの胸に刃が突き刺さった。

「キ、キィ…ア」

 数回、痙攣した後、ゴブリンは絶命した。

( ゚∀゚)「さて、右腕飛ばした方。次はてめーの番……?」

 いない。
 どこにいった? 右腕を破壊したから、そうそう動けないはず。

「キィィィ!!」

( ゚∀゚)「後ろかっ!」

 即座に反応し、剣でゴブリンの蹴りをガードする。
 だが、踏ん張りが甘かったのか、俺はよろけた。
 ゴブリンはその隙を逃さず、後ろ回し蹴りを放つ。

「キェ!!」

(;゚∀゚)「やっべ……!」

 剣が弾かれ、飛ばされた。
 まずい。ゴブリン相手に肉弾戦は得策じゃねえ。
 剣を取りに背を向けるか。いや、それなら、何か目くらましをしてから。

川д川「トミノトミノアカイチノミホスアノヨマデ」

「キェ……!?」

 不意に、背後から呪文が聞こえた。
 貞子? あいつ、離れてろって言ったのに!

(;゚∀゚)「バカ、逃げろ!」

 ゴブリンが、詠唱に気付きターゲットを貞子に変更。
 俊敏な動きで、貞子へと一直線にかけて行く。
 まずい、間に合わない。
 そう思い、目を瞑ろうとしたその時だった。

川д川「闇に生きる者よ、その身を滅せよ」

「キエェェェェェッ!?」

 貞子が、ドクロの杖を大きく振った。
 すると、ゴブリンが急に胸を押さえ、苦しみだした。
 まるで心臓を貫かれたかのように、のた打ち回る。

川д川「心呪縛」

「ギッ!」

 瞬間、ゴブリンの胸が裂け、中から飛び出した心臓が宙で破裂した。
 緑の血液が辺りに飛び散る。
 確認するまでもない。ゴブリンは絶命した。
 俺はしばらく、阿呆みたいに口を開けたままぽかんとしていた。

(;゚∀゚)「な、何だよ今の」

川д川「黒呪術」

 貞子は、潰れた心臓をさらに踏み潰し、平然と言ってのけた。
 背筋に悪寒が走った。
 こいつ、並みの使い手じゃねえ。ヤバイ。躊躇もまるでない。
 本物の呪術師だ。

川д川「大丈夫?」

(;゚∀゚)「あ、ああ。悪いな……」

 俺は剣を地面に突き刺し、立ち上がった。

川д川「危険と判断し、勝手に動いた。ごめんっち」

(;゚∀゚)「いや……」

 謝られても、返す言葉が見当たらない。
 こいつに助けられた。むしろ、俺が礼を言うべきだ。
 俺はうざったいプライドを投げ捨て、咳払いをした。

( ゚∀゚)「助かった。ありがとう」

川д川「……ふうん」

(;゚∀゚)「な、何だよ」

 貞子は、ドクロの杖で俺を指しながら言った。

川д川「素直」

( ゚∀゚)「……オイ」

川д川「いい子」

( ゚∀゚)「俺は年上だ」

川д川「物分りのいいおっさん」

( ゚∀゚)「よーし、ぶっころーす」

 俺は軽く貞子の頭をはたいた。
 相変わらず無表情のまま、貞子は俺を見上げる。

川д川「……虐待オヤジ」

( ゚∀゚)「うるせっ! 教育だよ教育。
     年上には敬意を払いなさいってことだ」

 貞子は納得いかない様子で、うーうー、唸っていた。
 バーカ、恥ずかしいんだよ。察しろっての。
 これでも一応、十年やってるからな。ギルダー。

( ゚∀゚)「でもま、お前の実力は認める」

川д川「ん?」

( ゚∀゚)「やり方はグロイけどよ、強いじゃねえか。
     足手纏いなんて言って、その、悪かったな」

 後頭部をかきながら、俺は言った。
 こういう時、素直に頭を下げられないのは、年ゆえか。

川д川「いいよ。私もジョルジュの実力、認める」

(;゚∀゚)「認めてなかったんかい」

 貞子はボロボロのローブの端で手を拭き、前に差し出した。

川д川「改めて、よろしく」

( ゚∀゚)「ああ」

 俺はその手をしっかりと握った。
 握手なんて、何年ぶりだろう。
 こうやって、パーティーを組むのも悪くない。
 そう……本当は、悪くないんだ。

 俺と貞子は、並んで森を歩く。
 今度は少し、お互いに距離を縮めて。





( ゚∀゚)「いっぱいいるなー」

川д川「三十、いや四十」

 ゴブリン襲撃から歩いて十分ほどの場所。
 森の奥に、廃墟がぽつんと佇んでいた。
 どうやら、あそこがゴブリンの住処になっているようである。

( ゚∀゚)「んー、こりゃ真正面から行くのはちと厳しいか」

川д川「厳しい。私の呪術も、個人用。集団相手は好ましくない」

( ゚∀゚)「ん? 集団用のやつはねーの?」

川д川「ある。……けど、時間がかかるし、オーラが出るからばれやすい」

( ゚∀゚)「なるほどね。魔法と仕組みは一緒ってことか」

 強力な魔法ほど、詠唱時間も長いし魔力のオーラが派手にでやすい。
 故に、魔法使いや呪術師などは後方。前列で戦士が食い止めるのが定石だ。

( ゚∀゚)「よし。んじゃあ俺が囮になろう」

 そう言うと、貞子が鎧の肩部分を掴んだ。

川д川「危ない」

( ゚∀゚)「平気だっつーの。暴れるのは得意だからよ。それに」

 俺はにんまりと笑って見せた。

( ゚∀゚)「お前の実力ってやつを、信じてみよっかなー、なんて」

 貞子は、鼻で息を大きく吸って、呆れたように大きくため息をついた。

川д川「……信じてくれる、嬉しい。けど失敗しても恨まないで」

( ゚∀゚)「ブワァーカ。失敗したら俺一人で何とかするっての。
     つーか、始まる前からそういう事言わないの」

川д川「あいた」

 俺は軽く小突いて、剣の柄をしっかりと握る。

( ゚∀゚)「行くぜ。貞子」

川д川「うん」

 俺は体内にある微量の魔力を、全て腕に集中。
 魔法使いの系統じゃねーから、ほんとに微々たる魔力だけど。

 あいつから教わった雷は、今もまだ俺の体に残っている。

( ゚∀゚)「っしゃあ!」

 俺は勢いよく飛び出した。
 一気に魔力を解放する。瞬間、剣に雷が付与。
 雷神剣。
 あいつと俺で作り上げた、最高にかっこいい必殺技だ。

「キィ!?」
「キィィィ!!」
「ギエギェ!!」

( ゚∀゚)「っせーぞゴブリンども!人間様が復讐しにきてやったぜオラァ!」

 食い物をむさぼっていたゴブリンに、雷神剣をお見舞いする。
 衝撃と同時に雷が広範囲に広がり、余波で数体を巻き込みつつ俺は駆け抜けた。

 襲撃に気付き、ゴブリン達は武器を手に取る。
 だが、隊も組んでない集団などただの烏合の衆だ。
 恐れるに足らない。

( ゚∀゚)「おいこら! それは人間様の食べ物だ!
     村から奪ってんじゃねえ森にあるもんで満足しやがれ!!」

「ギィィ!!」

 頭を貫き、首を狩る。
 剣を振るう度に雷が四方八方にとび、ゴブリンどもは完全に混乱。
 先手必勝とはよくいったものだ。

「ギィア!」

( ゚∀゚)「っと、そんな余裕こいてる暇ねーか!」

 一際体の大きいゴブリンが、仲間に当たることを恐れず、棍棒を振り回してくる。
 いるよなー、こういう奴。ちっとは周りの事も考えろってんだ。

( ゚∀゚)「仲間ごと殴ってんじゃ、ねえ!」

 叫び、剣を振るう。
 奴の体に刺さったが、浅い。お約束の贅肉ガードかよ。
 でもな、読みが甘い。

( ゚∀゚)「ライトニング・ブレイクッ!」

「ギ、ギギギギギ!?」

 剣を伝わり、雷が奴の体内で破裂する。
 パンッ! という破裂音と共に、ぐちょぐちょのねちょねちょが飛び散った。

(;゚∀゚)「うえ、気持ち悪っ!」

 ぺっぺ、と緑色の汁を吐き出しながら、辺りを見回す。
 十体は絶命。五体が重傷。五体が軽症。元気モリモリは二十体以上。

( ゚∀゚)「やっぱ四十はキツイなー」

 呟きつつ、ちらりと貞子の方へ気を向ける。
 最大まで強化した聴覚から、貞子の呪詛が聞こえてきた。
 よしよし、順調のようだな。

( ゚∀゚)(雷神剣も威力が落ちてきたし、そろそろ元に戻すか……)

 そう思い、魔力回路を閉じたその時だった。

川 ゚ -゚)「そこまでだ。愚弄」

 凛とした声が響いた。
 ゴブリン達の視線が、一斉にその声の主の方へと向く。

( ゚∀゚)「あ……?」

 つられて、俺もゆっくりと視線をそちらへ向けて。
 見てしまった。そいつを。
 長い黒髪に、漆黒のローブ。手の甲には、黒魔術師特有の、印。

(;゚∀゚)「て、てめえは……」

川 ゚ -゚)「ん〜〜〜? 誰かと思えば、ジョルジュじゃないか」

 三年前に俺達を裏切った、最低最悪のギルダー。
 クー=セイレーン。
 かつて共にパーティーを組んでいた仲間が、そこにいた。




川 ゚ -゚)「久しいな。元気してたか? ん?」

(#゚∀゚)「てめぇ、よくもまあそんな口がきけたもんだなっ!」

川 ゚ -゚)「いやぁすんませーん。というかね、何?
     まーだギルダーやってたん? しかも懲りずにパーティーなんか組んじゃって、爆笑(笑)」

 そう言って、クーが茂みの中を指差した。
 嫌な予感がした。

(;゚∀゚)「まさか」

 俺は慌てて、茂みの中に足を踏み入れる。
 ぴちゃり。
 赤い海が、足元に広がっていた。

(;゚∀゚)「おい、呪術師?」

 だらりと、力なく倒れているモノ。
 嘘だ。
 生きてるんだろ? なあ、そう言ってくれよ。

(;゚∀゚)「貞子」

 体を起こしてやる。
 が、貞子は首をだらりと垂らし、目は見開かれていた。
 死んでる。
 おい、ふざけんなよ。お前、呪いはどうしたんだよ?
 詠唱が長い分、強力なんだろ? なあ、貞子。

( ゚∀゚)「返事しろよ……」

川 ゚ -゚)「うわはははは。哀れ哀れ。もうね、アホかと。
     まーた仲間が死んで、お前が生き残っちゃったね、ジョルジュ」

( ゚∀゚)「……」

川 ゚ -゚)「あの時と一緒だな。『千里眼の魔術書』護衛の時と、全くオ同じ。
     ああ、皮肉だ。あの時は本当にすまない」

 クーは、笑いながら言った。

( ゚∀゚)「……」

川 ゚ -゚)「だがな、私はどうしても千里眼の魔術書が欲しかったんだよ
     例え君を裏切って、仲間であるしぃを殺してでもうばいとりたかった。
     魔物を自在に操れるという魔法を、使ってみたかった」

 クーは淡々と言った。
 あの時、俺は女剣士のしぃ、そして黒魔術師のクーとパーティを組んでいた。
 仕事も順調で、それなりに厳しい仕事も任されるようになってきた矢先だった。
 千里眼の魔術書の護衛。
 クーの裏切り。目の前で、無残に焼き殺されたしぃ。

 護ってやるって、言ったのに。
 約束したのに。
 しぃは目の前で殺された。
 今でも鮮明に思い出せる。

川 ゚ -゚)「ははは。ジョルジュ、私が憎いか?
     憎いよな。でもな、私も同じくらい君が憎い。
     愛おしくて、愛おしくて、私を狂わせた君が憎いなぁ」

( ゚∀゚)「わけわかんねーよ」

川 ゚ -゚)「しかし、運命とは素晴らしい。
     君と私が今日ここで出会ったのは本当に偶然だ。
     そしたら悪い虫がついていたから、駆除しておいた。
     神様も私とジョルジュは結ばれるべきだと」

 クーが言い切る前に、俺は剣を握り襲い掛かった。
 猛獣のように叫びながら、大振りする。
 だが、クーの近くに潜んでいたゴブリンがタックルを仕掛けてきた。

(;゚∀゚)「ぐぅぅぅっ!」

 吹っ飛ぶ。
 いかん。今のはモロ入った。アバラいったか。

川 ゚ -゚)「はは、ワロス。やはり魔物の力は強大。
     そして、そのマスターである私はさながら魔王候補といったところか」

( ゚∀゚)「笑わせんな……何が、魔王だ」

川 ゚ -゚)「今はまだ下級の魔族しか操れん。しかしいずれは、
     全ての魔族を支配して見せよう。この千里眼でな」

 クーの右目の色が、藍色に変った。
 ゴブリン達が奇声をあげる。
 はは、魔女みてえ。

川 ゚ -゚)「どうだ? 私と共に世界を手にしないか?」

( ゚∀゚)「二人だけの世界を、か?」

川 ゚ -゚)「そうだ。人間は全員殺して、私達だけの楽園を作ろう。
     ふふ、お前は特別だ。私の下僕になり、尽くせ」

 俺は笑った。
 なんだ、そりゃ。
 そんな戯言。幼稚な願いの為に、しぃを、そして貞子を殺したのか。
 せっかく、また仲間が出来たと思ったのに。
 お前はすべてを奪い去るつもりなのか。

( ゚∀゚)「答えは否、だ」

川 ゚ -゚)「そうか」

( ゚∀゚)「ああ。悪いが、俺はお前を仲間とは認めない。
     むしろ憎い。殺してやりたい。つまり、敵だ」

 クーはため息をついて、肩をすくめた。

川 ゚ -゚)「ならば仕方ない。手足を折って、連れて行くとしよう」

( ゚∀゚)「出来るかな? 俺は強ぇぞ」

川 ゚ -゚)「弱いよ、お前は。
     私には、ほら、こんなにも頼もしい仲間がいる」

 ゴブリンかよ。
 そりゃ、仲間じゃねえ。駆逐してるだけの下僕だ。

( ゚∀゚)「お前に、仲間の意味はわからねえよ。一生な」

川 ゚ -゚)「ふふ、君も私の仲間になるのだ。これから、ずっとな」

 人の話聞けよ。
 このわからんちんが。メンヘラが。
 容赦はしない。ぶっ殺す。
 刺し違えてでも、殺してやる。これ以上、俺みたいな、
 大切な人を失う人間を増やさない為にも。

川 ゚ -゚)「……ん?」

 ふと、クーの様子がおかしくなった。
 キョロキョロと辺りを見回している。

( ゚∀゚)「……?」

 何か、聞こえる?
 声?

『トミノトミノオオイナルソラヨチノアメヲフラシ
 ジャアクナルモノハニクシミヲツミヲバツヲアタエヨ……』

( ゚∀゚)「まさか、これ」

川 ゚ -゚)「な、何だ。気味の悪い、え、あ、胸が、おかしい」

 クーが胸を押さえ、倒れる。
 周囲のゴブリンも、倒れ始めた。

(;゚∀゚)「……貞子?」

 ふと、空を見上げる。
 黒い黒い、暗雲が立ち込めていた。
 不意に、思い出す。貞子の言っていた言葉を。


川д川『例えこの命尽きようとも、私の怨みは憑依し敵の身を滅ぼすだろう……』


 まさか、これは貞子の……!?

川;゚ -゚)「ぐは、グェェゴエェェ!!」

川д川「呪まーす」

 黒い煙がクーの体から噴き出す。
 やがて、それは貞子の形となり言葉を発した。

川;゚ -゚)「やめ、ろ……貴様……」

川д川「死ね」

 バクン、という音が、森に鳴り響いた。
 クーの胸が裂け、頭が破裂し、中身が飛び散った。
 ゴブリンも同様に、一体ずつ、じっくりといたぶるように破裂する。

(;゚∀゚)「……」

 そして、残されたのは、俺一人となった。
 ぽつりぽつりと、雨が降り出す。

 その雨にまかれて、煙となった貞子は空へと上っていった。

(;゚∀゚)「おい……お別れの挨拶とかしてけよ。
     年上には敬意を払えって言ったのによ……」

 一人残された俺は、
 ただ、呆然とその場で膝を突いていた。


 エピローグ


(´・ω・`)「はいよ。報酬の300ゴールドだ」

( ゚∀゚)「……おう」

 VIP街の魔法医務室に、ギルド長が直々にやってきた。
 報酬の入った袋を受け取り、俺は痛む体を横にした。

(´・ω・`)「アバラ折られて300じゃ、散々だな」

( ゚∀゚)「全くだ。依頼人に文句の一つでも言ってやりたいぜ」

(´・ω・`)「依頼人、村の連中は大いに喜んでいたぞ。
      ギルダーさんによろしく、だとさ」

( ゚∀゚)「へ。のん気なもんだぜ。
     あんな安い依頼を受けるギルダーなんざ、そうそういないっての」

(´・ω・`)「いるじゃないか」

( ゚∀゚)「だれよ」

(´・ω・`)「僕の目の前にさ」

( ゚∀゚)「けっ」

 俺は窓の外に目をやる。
 街の連中は相変わらず世話しなく動き、肩がぶつかっても挨拶一つしない。
 どこか殺伐とした世界。
 そんな世界で、仲間だなんだ言ってる俺は阿呆なのだろうか。

( ゚∀゚)「なあ、マスター」

(´・ω・`)「ん?」

( ゚∀゚)「仲間って何だろうな」

(´・ω・`)「そりゃお前、寝る間も惜しんで看病してくれるような
      奴の事を、仲間っていうんじゃないか?」

( ゚∀゚)「……妙に具体的だな」

(´・ω・`)「ごほん。ま、お邪魔虫は退散するかなー」

 訳の分からない事を言って、ギルドマスターは部屋から出て行った。
 釈然としない。
 俺はぼんやりとする頭を振って、はたと気付いた。

( ゚∀゚)「あれ? 俺、どうやって森から帰って来たんだ?」

 記憶が曖昧だ。
 自分の足でもどってきた気もするし、しかしこの怪我で歩けたのか?

 森の妖精さんが運んでくれたのかな。
 なんて、アホな事を考えつつ、ベッドのわきに目をやった。

川д川「……ぐう」

( ゚∀゚)「は?」

 目の錯覚だろうか。
 死人が見える。

川д川「むにゃ」

( ゚∀゚)「あ、死人が起きた」

川д川「生まれて初めておはようございました」

( ゚∀゚)「意味が分からん」

 貞子は平然と、背筋を伸ばし立ち上がった。
 おいおい、どういうこった。こいつ、死んだはずじゃ?

川д川「人形」

( ゚∀゚)「はい?」

川д川「藁人形。あのクーとかいう人が殺したのは、人形」

( ゚∀゚)「えーっと、身代わりとか、そういうアレ?」

川д川「そう。呪いをかけた藁人形は、死した時に発動する。黒呪術最大の呪詛」

( ゚∀゚)「……」

 まてまてまて。
 お前、いつからクーの気配に気付いてた?

 ジョルジュがゴブリンに突撃するちょっと前。
 不穏な空気、感じたから。

 じゃあ何か? なんも知らなかったのは俺だけ?

 敵を騙すにはまず味方から。

 ……。

 痛い。何故殴る。

 いいか、仲間ってのはな、信頼が重要なんだ。
 お互いに信用しあってこそだな……。

 ふうん。

 なんだよ。

 ジョルジュにとって、私は仲間?

 バーカ。
 当たり前だろうが。

 じゃあ、これからも――パーティー、組んでくれないか?
 私、気に入った。ジョルジュのこと。

川д川「駄目?」


( ゚∀゚)「バーカ」


 俺は手で丸を作って見せた。
 貞子は笑顔を浮かべた。

 初めて見せた笑顔は、どんな雷魔法よりも
 痺れる、そんな魅力的な笑顔だった。


fin

posted by zpwなんとか at 07:51| Comment(0) | TrackBack(0) | はじめに | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/109751458

この記事へのトラックバック